2020/9/17仕事

Story of 人の歴史

普通の人の人生だって普通に面白い



先日、成年後見の申立てを行いました。
この件、ご依頼いただいたのは半年前の3月頃でした。
早々に一度お客様から聞き取りを行って申立書を作ってから、コロナの影響で満足に動けず、ご本人の財産の調査やら相続財産の調査で時間がかかっていました。
なんとなく家庭裁判所のHPを確認したら、どうやら4月頃に成年後見の申立書の書式が変更されて、新たに確認事項が増えてしまい苦労しました・・・
もっとも書式変更なんてそうよくあることではないんですけどね。運悪く。

申立にこぎつけたことで、ようやく少し安心できたのですが、実際後見人が誰になるのかはまだ分からずまだまだ安心もしていられません。


ちなみに申立をする際は、法務局も裁判所も地方によっていろんなローカルルールがあるので、申立て前に必ず確認をするようにしてくださいね。
双方とも割と昔ながらの役所体質がぬぐえないところがあるので、大人しく従った方がスムーズなことがほとんどです。


私のところには、年に数回程度成年後見の申立の依頼が舞い込んできます。
頼って頂いたことをに感謝しつつ、ありがたくお受けして書類の作成を行うのですが、実は毎度書類作成の際に困る(ちょっと残念に思う)ことがあるので、そんなお話をします。


人の歴史

成年後見の申立書にはいくつかの添付書類が必要です。
診断書や戸籍の他に『事情説明書』というものを添付します。
この事情説明書には、認知症や意思能力が不十分になられた方ご本人の状態を書いていく書類です。

その中に、ご本人の略歴を記す欄があります。



申立書等のデータはここからダウンロードできます。

https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/kokensite/moushitate_seinenkouken/index.html

私のところに成年後見の申立依頼をしていただく方の大半は、ご両親のどちらかの成年後見の申立です。
なので、ここでいう『本人』とはご両親のどちらかを想定してください。
要するに親の家族関係や学歴・職歴を記載していく必要があるわけです。


さすがに現在のことはよくわかっていらっしゃる方がほとんどですが、この略歴の話になると細かい数字は置いておいても、ほとんどの方がよくわからないとおっしゃいます。
お父様、お母様の小学校に通っていた頃の話や就職をした時のことを話したことがある方は多くありません。
もっとも、このことが成年後見の申立において、後見人の選任についての判断に大きく影響することは考えにくいので、業務においては支障はそれほどありません。

ただ認知症になってしまった人、亡くなってしまった人の人生をついぞ詳細に振り返ることができないというのは非常に悲しいことだと思います。


映画『リメンバー・ミー』はご覧になりましたか?
ディズニーピクサーらしく、明るくそして美しく描いていますが、人間の死後について深く考えさせられる素晴らしい作品だと思います。

宗教観はここでは触れずに置いておくにして、死後忘れられてしまうとあの世からも消えてしまうという設定。
忘れられてしまうことは死者にとっても恐ろしいものだということです。
私たちには関わったすべての人を覚えておくことはできませんが、家族やかつて大切だった人達ぐらいは覚えておきたいと思いませんか?

ちなみに私は普段字幕派ですが、この映画は吹替の方が圧倒的にいいです。
主人公の男の子の歌が最高です。




悩んだときにこそ辿り着く

シェイクスピアは、著ハムレットの中で『人生は選択の連続である』と記しました。
大きな選択、小さな選択、日常の中には本当にたくさんの選択が溢れています。


人の悩みは、事の大きさや細部は違っても大きな枠で見たら決定までのプロセスに大差はありません。
歴史を知れば、人生に迷ったとき、大きな決断に迫られたとき、親は、祖先はそのときどんな選択をしてきたのか、それを参考にすることができます。
学生の頃は、歴史の授業なんて何のためにやるのだろうと本気で思ったものですが、過去から今を知ることもあると大人になってから思うようになりました。

せっかく知ることができるなら、親や祖先の選択に耳を傾けてみるのも、後悔しない選択を見つける方法の一つだと思います。

それから、人はある程度歳を重ねると、自らのルーツを知りたくなるようです。
うちの事務所では、相続のご依頼を頂いた際、相続の手続きのために集めた戸籍からわかる範囲で家系図を作って差し上げています。
実際、結構喜んでもらえるのですが、祖先のことを知りたくていずれ作りたいと思っていたとおっしゃる声もとても多いです。
人は誰しも、最終的に自分の根源的なところに行きつくのかもしれません。


今できること

要するにご両親のことをもっと良く知っておくべきだと伝えたいのです。
しかし、そんなタイミングがないのも事実です。

それは分かります。
私もそうでしたから。
実際、2年前まで去年亡くなった父のことを詳しく知りませんでした。
2年前にたまたま想いが伝わる遺言書の動画を作るために、私自身が父に聞き取りを行いました。
そのときに初めて知ったことがたくさんあり、今ではそれが宝物のようなものです。


多分、親御さんが元気なうちはこんなことを気にすることはそうそうないでしょう。
いずれ来るかもしれないそのときには、こんなこともう聞けないかもしれません。
いつでも聞けることは早めに聞いておきましょう。
待っていてもタイミングはやってきません。未来は誰にも分りませんから。


個人的なおすすめはエンディングノートを書いてもらう方法です。
このリンク先で当事務所のエンディングノートがダウンロードできます。

ご利用は自己責任でお願いします。

死後のことを話し合うのではなく、今はあくまで経歴についてのみで良いと思います。
相続のことまで話を持って行くと、話しにくいこともあるかと思うので。

もう一つの方法は、日本一『想い』が伝わる遺言書 を残していただくかです。
こちらは、ただ遺言書を作るのではなく、経歴から人生のターニングポイントとなった選択についてお話を伺い動画にしています。
相続と人の歴史両方をうまく混ぜ合わせ、その人の生きた証拠として優れたものを残させていただいています。

仕事柄、いろいろな方の歴史について話を聞いてきました。
バーのマスターや元ピアニスト、それから普通のサラリーマンの話。
優劣なんかなくて、普通の人の普通の人生だって決してありきたりなんかじゃなくて、とても素敵な話に溢れていました。
今は、普通の人の普通の人生こそ記録や記憶に残って欲しいと思って仕事しています。
多くの人に広く知ってもらうことは難しいかもしれません。
でも少なくとも、家族だけは知るチャンスがあるし、知って欲しいと思うのでした。


余計なお世話だと思うのですが、今週末にでも親御さんと幼少期から現在までどんな人生を歩んできたのか聞いてみる時間にしてみませんか?
これをお読みいただいた今こそがタイミングだと思うのです。



最後までお読みいただきありがとうございました!!