2021/3/29相続

Story of 実は深い戸籍の請求

自分の権利に自信を持とう


人間、ある程度の年齢になると自身のルーツに想いを馳せると聞きます。
いくつかのお話を聞くと、祖先と同じような職に就いていたり同じような選択を迫られたとき同様の選択をすると言います。
自らのルーツを知ることで決断を下すのに参考になるようです。
私のところでは、相続のご依頼を頂いたときにサービスとして、その相続に関係する戸籍からわかる家系図を作るようにしています。普通の相続で集める戸籍だけでも相当な親族数が載ってくることもあって、それをまとめるだけで結構時間がかかってしまうこともあるので、自分で始めておきながら時々後悔することがあります。。。誰にお願いされたわけでもないので、やめればいいのですが。


今回は戸籍の請求の仕方について。
戸籍とは自分の本籍地に備え付けられている、身分に関することが記載される台帳のことです。尚、住所地と本籍地は別物です。住所地は必ず現に住んでいる場所にする必要がありますが、本籍地は自由に決めることができます。ご存知の方も多いと思いますが、皇居(東京都千代田区千代田1-1-1)は本籍地の人気スポットでもあります。

また、本籍地と住所地は記載の仕方が微妙に異なっている場合が多いです。

例えば、同じ場所でも

住所地は 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号
本籍地は 〇〇県〇〇市〇丁目〇番地

と記載されることがあります。この辺りは自治体によってさまざまで、全く同じ場合もあるので、あまり統一されていないルールでもあります。
昔は免許証に本籍地が記載されていたので、ふと忘れてしまっても免許証を確認すれば分かったのですが、今は免許証には住所地が記載されていないので、どうしても本籍地を忘れてしまった場合は住民票を取る必要があります。本籍地がわからない人は結構多いものです。


さて、先日、先祖探しを手伝って欲しいという相談がありました。やむを得ず、一族のために行ったこととその費用の分担について末裔の方々とお話をする必要があり、親族(本家)の子孫を調査したいというお話でした。
確定的な債権とは言いにくいので、職務上請求(司法書士に認められる住民票や戸籍の請求方法)を使うことは避け、委任状での第三者請求をすることとしました。
この委任状での戸籍請求がなかなか曲者でして、必ずしも簡単に取得できるわけではないのです。

相談者の中には、戸籍は自分で請求しますとおっしゃる方もいらっしゃるのですが、思うように戸籍が請求できなくて、結局改めてご依頼頂くケースもあります。

そもそも戸籍の請求とはどういうルールなんでしょうか。



戸籍の請求



戸籍の請求にはいくつかの方法があります。実は、明確に戸籍法にその方法が記載されています。
戸籍法の重要な部分を以下に掲載します。

戸籍法
第10条 
戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
2 市町村長は、前項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。
3 第一項の請求をしようとする者は、郵便その他の法務省令で定める方法により、戸籍謄本等の送付を求めることができる。

第10条の2 
前条第一項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
 前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
2 前項の規定にかかわらず、国又は地方公共団体の機関は、法令の定める事務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求の任に当たる権限を有する職員は、その官職、当該事務の種類及び根拠となる法令の条項並びに戸籍の記載事項の利用の目的を明らかにしてこれをしなければならない。

                 以下略


10条には戸籍を請求できる人が記載されています。
配偶者(夫・妻)が請求できるのは当然として、誰がどこまでの戸籍を請求できるかは赤字の部分を見てみると、直系尊属若しくは直系卑属とあります。
これはつまり、『おじいちゃんの戸籍を孫は当たり前に取れる』ということなのです。それは反対に言うと、どんなに近くても『兄弟の戸籍は簡単には取れない』ということです。が、誰がどこまでの範囲の戸籍を取れるのかということについては、次の項目で法律における親族関係を知ってからの方が良いでしょう。


そして、10条の2には、直系尊属若しくは直系卑属以外の人間が戸籍を請求するときの方法が記載されています。これを第三者請求と言います。
赤字の部分が具体的に請求する方法です。自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するため、その理由を証明することができれば請求できるというルールになっています。
ただ、その実役所の人間の判断ということになっており、一部地方の役所では第三者請求自体をほとんど受け付けない様な姿勢を取っている場所もあります。(個人的には明確に法律違反だと思いますが・・・実際にはそんな方法があるという法律を知らないだけな様な気もします。)


そんなこんなで、直系血族からの調査であれば簡単ですが、傍系血族からの請求であるとなかなかハードなことになるのです。



法律における親族関係



先ほどの条文を理解するために補足しておきます。
以下の図にて簡単に説明します。

本人を中心に配偶者と祖父、いとこまでのものです。
親族を法律的に理解するためには、直系と傍系、血族と姻族を理解する必要があります。

まずは直系と傍系について。



本人から見て、直系とは上や下に直接つながっていく系統のことです。どこまで上もどこまで下も直系です。この図にはありませんが、子や孫も含めて直系血族ということになります。ちなみに、配偶者の両親、祖父も直系と言えます。
傍系とは、直系を除いた血族のことを言います。兄弟姉妹やそこから枝分かれした血族を指しています。


続いて、血族と姻族について。

上記のように直接血を分けた人を血族と言います。但し、仮にKが養子の場合、直接血の繋がりはなくても血族に当たります。姻族は直接血の繋がりのない配偶者の血族を指します。

配偶者は特別な存在で、直系でなければ傍系でもなく、血族でもなければ姻族でもありません。でも誰が何と言おうと法律上の親族なのです。

ちなみに民法上親族とは以下のとおりです。

民法
725条(親族の範囲)
次の掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等以内の姻族

はっきりとここに配偶者は親族と記載されています。
配偶者だけは特別っていうのも何かいいですね。

法律上の親族について、本来はもう少し広範囲の説明が必要ですが、今回はあくまでついでなのでこの辺りで。



心構え



相続などの理由で、これから戸籍を自分で請求しようという方は直系血族の戸籍を請求するところはスムーズに行えると思います。傍系血族の戸籍は、第三者請求となるためなぜ戸籍が必要なのかを説明する必要があります。
正当な理由があるのであれば、しっかり理由を説明すれば取得できないものではありません。市町村役場の担当者によって判断が変わる部分があります。関東圏ではあまり断られたことはありませんが、地方の役場で何度もやり取りをすることを余儀なくなされたこともあります。

相続が理由ならほとんどの場合問題がありません。それでもNOを突き付けられたら、法律を盾にじっくりと話をしましょう。


ちなみに、司法書士や弁護士などの士業は職務に関わる戸籍、住民票などは職務上請求という方法で簡単に取れるようになっています。第三者請求となる場合でも、多くの説明を要することなく取得できます。士業の信用に対する大変大きな権限です。


自分の親族の戸籍を請求するのも実際にはそれなりに大変です。困ったときは専門家へ。




最後までお読みいただき、ありがとうございました!!