2021/2/22相続

Story of 遺産分割はお早めに

時は人を待たず


人生できれば後悔のないようにしていきたいと常々思います。

こういう仕事をしていると、もう少し早く会えればできることがあったのになぁとか、もう少し早く実行しておけばなんとかなったかもなぁと思うことが時々あります。

どれだけ悩んでも、悔やんでも、時間は巻き戻らないわけですから、そんなことを考えすぎても意味はそれほどないんですけどね。
これからできることに力を入れる方が圧倒的に建設的です。


そんな風に割り切れればいいんですが、人間なんでそんな風には割り切れず結局悩んだりします。


今日は、相続における期限のお話を。
後悔しないために知っておいて欲しいです。



相続における時間制限

お客様とお話をしていると、なんとなく相続における色々が期間の制限があるように思われるようなんですが、実は時間の制限がある手続きはそれほど多くありません。

⑴死亡診断書           →  7日以内
⑵相続放棄申述          →  3ヶ月以内
⑶準確定申告           →  4ヶ月以内
⑷相続税申告(納税)       →  10ヶ月以内
⑸遺留分侵害額請求権の除斥期間  →  1年以内
⑹生命保険金の請求期限      →  3年以内
⑺その他各種時効にかかる債権   →  5年または10年以内



相続における期限の定めのある手続きというとこれぐらいです。
思ったより少ないと思いませんか?

意外かもしれませんが、遺産分割協議、銀行預金の解約、不動産登記(名義変更)などの手続きには期限がありません。
だからいつやってもいい、というわけではないんですが、残念ながらいつやってもいいって気になってしまいがちです。
そのことが我々司法書士が何が何でも急いでやった方がいいですよ、という決め手に欠く部分でもあったりします・・・

相続税がでるような相続の場合は、相続税の申告及び納税に間に合わせるために、税理士がイニシアチブをとりつつ10ヶ月以内に遺産分割協議や各手続きを終えることを目標にするので大きな問題は起きません。
つまり、税理士が関わるような相続では期限がない手続きに関しても一緒にやっていくので先延ばしは起きにくいってことです。



ちょっとだけ過去のお話

その昔、とある相続の相談がありました。
お母様が随分と前にお亡くなりになり、相続手続きをしていない預金があるうちに、お父様が病床に伏してしまいどうすればよいか、内容でした。
相続人は、お父様とお客様のお2人です。
また、お父様には前妻との間に子供がおり、お客様と前妻の子とは面識は一切ありませんでした。
お母様の相続人はお父様とお客様の2名なので、2名の間で遺産分割協議を行うことができれば万事解決でした。

そこまでアドバイスしていたものの、お父様の病院が遠距離だったこともあってこの話ができないままにお父様が息を引き取られました。
その結果、お母様の相続人はお客様とお父様の相続人としての前妻の子の2名となってしまいました。
一度も連絡を取ったことの無い相手と遺産分割をしなくてはならなくなり、無用な気遣いと手間が発生することとなり、お父様の遺産はともかくとして、直接相続とは関係ないお母様の遺産についてまで主張される可能性がある状態となってしまいました。


お父様の死という時間の制限は誰にもわからないことでしたから、どうしようもなかったのですが、今でももう少し早くご相談を受けていればと少し悔やみました。


ちなみに、一度も会ったことの無い相続人に対して遺産分割をしたい場合は、できる限りまずは相続人同士で連絡を取ることをお勧めします。
専門家から連絡をすると、相手を警戒させすぎるきらいがあります。当事者同士で話せば解決できることもかなりたくさんあります。


知らない親族と話すことは精神的に負担になるかもしれませんが、やっぱりまずはその一歩を踏み出すべきだと思います。



最後に

少々話がそれましたが、確かに遺産分割協議や不動産の名義変更などには期限がありません。
尚、不動産の登記手続きはずいぶん前から国会で義務化を求める法案が提出されています。今国会でもまた話題になっています。
その背景には、国家的問題となっている空き家対策や相続トラブル対策など複合的な理由があります。
ただ、相続税の申告とは異なり、未分割のままでの登記というのはなかなか難しいところがありまして、義務とするならどこまで簡易的にかつ納税を減らして処理できるようにするのか、そこがテーマになると思います。


ともあれ、

今の状態でも期限はありませんが、決してそのままでいいというわけではありません。



放置しておくと、①相続人が増えたり、顔ぶれが変わる ②相続に必要な書類が揃わなくなる ことがあります。
最初は相続人が5人ぐらいだったものが、30年後には30人に増えてしまっているということもあります。
こうなると、一人一人と連絡を取って遺産分割を実行するのは相当に骨が折れる作業です。専門家に頼むと費用もかなりかかります。

そんなわけで、いくら期限がなくても相続の手続きは決して先延ばしにしてはいけません。
面倒でも今ちゃんとやっておくことが、将来的にあなたのためになりますよ!




最後までお読みいただき、ありがとうございました!!