Story of 記載のない財産をどうする?
世の中『知らぬが仏』ということもたくさんある
ペースは一度乱れると、なかなか戻すのが難しいですね。
今年は毎週ブログを書くつもりが、帰省やら体調不良で2週間休まざるを得ずそこからずるずると・・・
ありがたいことに毎週毎週いろんな相談を頂くもので、ブログにする話には困らないのです。
一応このブログでは、相続を中心に、よくある困った事例、その対策、新しい法律に対する考察など一般の方をメイン対象に据えて誰かの役に立てばと思って残しています。
今回は、遺言書や遺産分割における具体的な財産以外の『記載のない財産』について。
ここはケースバイケースで非常に論点が多い部分です。
真実はいつも一つだけど、相続においては真実がいつでも正しいかはまた違う話のような気がします。
遺言書や遺産分割協議書には何を記載するか?
遺言書、遺産分割協議書とあまりひとくくりにするようなものでもないのですが、どちらにでも言えることで、各書には必ずしも全財産について記載する必要はありません。
一部の財産について遺言書を書いてもいいし、一部の遺産について遺産分割をしても構いません。部分的に記載するのはリスクを先延ばしにしてしまうこともあって、お勧めできないことも多いですが、時には不動産だけ記載するなどの方法を取ることもあり得ます。
⑴遺言書の場合
遺言書
1.下記の不動産を××に相続させる。
所 在 〇〇
地 番 〇〇
地 目 〇〇
地 積 〇〇
2.下記の預金を◇◇に相続させる。
①〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号 〇〇〇 名義人 〇〇〇
②〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号 〇〇〇 名義人 〇〇〇
●●年●●月●●日
◎◎ ㊞
このように遺言書に記載すると、具体的に記載された財産だけが指定されたとおりに相続されます。では、それ以外の財産はどうなるかというと、遺言書の指定のされていない財産、つまりこれらは遺産分割協議が必要な財産となります。
尚、遺言書に記載されている財産は、遺産分割協議は不要です。
せっかく遺言書を書いたのに、亡くなるまでの間に新たな財産が発生した場合や記載し忘れた財産が出てきた場合、その財産を巡ってトラブルになることがあります。
なので、遺言書を作成するときは極力全部の財産に行先を定められるように考えます。
あなたは10年後の自分の財産がどうなっているか、想像がつきますか?
遺言書を書く年齢にもよりますが、財産構成は日々変わる可能性があるものなので、遺言書は少なくとも数年おきに書き直すことが必要です。
⑵遺産分割協議書の場合
遺産分割協議の場合は、遺言書と異なり変化することはありません。遺産はあくまでも亡くなった日の財産でありそれは変わりようがありません。
遺産分割協議のときは、すべての遺産を遺産分割協議書に具体的に記載することで漏れがなくなります。
じゃあ遺産分割協議のときは一部だけ書くなんてことはあり得ないじゃないか、と思われるかもしれません。
狙って一部を書くということではないのです。全財産を把握できず、結果一部の財産のみについて遺産分割になってしまったということがあるわけです。
亡くなった人の全財産を調査するのは意外と難しいものです。
終活をちゃんとしていて、家族がわかるようにどこにどの財産があるのか明確にしてくれている場合はいいですが、そうでなければ通帳やキャッシュカード、不動産の権利書などの手がかりをもとに調査をして発見する必要があります。
遺産調査に絶対はなく、亡くなった本人すらも忘れてしまっている財産さえも存在します。それらを完璧に調査することは難しいでしょう。
遺産分割協議の場面では絶対に遺産はこれだけだ!と思って作っても、あとから見つかることがあり、その財産を巡って再度遺産分割をしなくてはなくなり、それをきっかけに相続トラブルが発生してしまうことも・・・
抽象的な記載のススメ
具体的に財産を書くと漏れが発生したときに後から揉めるということが往々にしてあります。
そこで重要なのが、遺言書や遺産分割協議書に抽象的な事柄を記載することです。
例えば次のような一文です。
この遺産分割協議書に記載のない遺産は〇〇が相続するものとする。
このように記載しておくと、遺産分割協議書に具体的に記載されていないその他のすべての財産が指定された人に相続されることになります。
こうすることで一度作成した内容で決着を付けることができます。
但し、これはリスクも高いので注意が必要です。
遺産分割の際には一部の相続人が意図的に遺産の存在を隠し、このように記載させることで、誰にもばれずに多くの財産を自分のものにしようと目論むことがあります。
相続人間で遺産についての情報格差が発生している場合には特に注意が必要です。
また遺言書の場合は記載した当初と財産構成が大きく変わり、具体的に記載されている財産が縮小し、一方で記載されていない財産が増えた場合には当初の想定とは全く違う遺言書になってしまうことがあります。
相続人も知り得ない不特定の財産があるようなケースでは、非常に便利な一文ですが、想定されるリスクをしっかり理解した上で追加しましょう。
経験則的には何年後、何十年後この規定があって良かったと思えることの方が多いように思います。
結構この一文によって救われるケースがあるものですよ。
終活って大事
抽象的記載は自らの想像の及ばないところで役に立ちます。亡き人の財産の全貌が見えていない場合や財産構成が大きく変わってしま要な場合に非常に有効な項目です。
裏を返せば、全財産が把握できている場合やちゃんと数年ごとに遺言書を書きなおしている方にはこの規定は不要と言えます。
遺言はちゃんと数年おきに書き直すことは忘れず。
遺産分割は、終活をちゃんとしていてくれれば、多くの場合で財産が漏れることはなく(本人も忘れているケースもあるので絶対じゃないんですけどね)抽象的な記載をしなくても良いと判断できます。
情報が少ない中で遺産の調査をするのもそれなりに大変ですし。
できれば終活をしっかり行い、相続人に対して財産の全てを明確にしてあげておくことをお勧めします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!