2020/7/31相続

Story of 自筆証書遺言保管制度を極める(前編)

Never forget the beginner’s humility.



7月10日から自筆証書遺言の保管制度が始まったのはこの前のブログでも触れさせていただきました。

FACEBOOKでやってみたい人を募集してみたら、そもそも自分でやってみなよという声を頂きまして(当然と言えば当然のことですが)、確かにそれが一番手っ取り早いということで、すぐに予約して自分でやってきました。
言われずともすぐに自分でやってみようってならなかったところが初心を忘れている気がして、気を引き締めなくてはいけませんね・・・


で、結論、やっぱりなんでも自分でやってみるのが一番です。
そして、気づいていなかった結構大事なことを見落としていたので、いきなりお客様にご案内しなくて本当に良かったと胸を撫でおろしました。

これから自分でやってみようと思っている方も多いと思うので、手順と注意点を詳細に残していこうと思います。

多分どこよりも詳しく書いていると思います。
長くなるので、2回に分けていきます。


1.遺言書を書く


当たり前ですが、まずは遺言書を書きましょう。
内容が決められない場合はご相談ください。
この後説明しますが 、保管制度を利用するときは予約しなくてはなりません。
先に日程を決めちゃうと、焦って一番大事な遺言書が雑になってしまいますよ。
法務局は、書き方や内容については一切相談にのってくれません。これでいいか、悪いのか、正しい書き方ができているのかも含めそこまでは専門家を頼るなどして、自分で作る必要があります。
保管してもらっていざ遺言書を使う段階で、この遺言書では手続きできません、ってことがあり得ます。

尚、既に遺言書を書いている人はそれを保管してもらうことは可能ですが、注意点があります(後述、自筆証書遺言を書く上での注意点⑤後半参照)。



自筆証書遺言を書く上での注意点

①財産目録以外は全部自分で書く必要がある
大変でも絶対自分で書きましょう。自分で書けない人は公正証書遺言を検討した方が良いです。
尚、財産目録を添付する場合は、財産目録の末尾にも自署と押印が必要です。
財産目録も後述する余白に注意が必要です。

②日付を明確に記載する
曖昧な日付は無効になります。

③署名の隣に印鑑を押印する
印鑑自体に制限はなく、認印でも可です。状況にもよりますが、やはり実印での押印をお勧めしています。

④書き損じたときは極力書き直しましょう
自筆証書遺言では訂正の仕方もルールが決められています。普通の訂正方法ではないので、心配な方は大変でも一から書き直しましょう。


ここまでは通常の自筆証書遺言の注意点です。
ここから先は保管制度特有の注意点を挙げておきます。

⑤A4サイズの用紙を使用した上で余白を確保しなくてはならない
用紙はA4サイズと指定されています。また、余白を作っておかないと受け付けてもらえません。
余白部分は、左20ミリメートル以上、上と右5ミリメートル以上、下10ミリメートル以上を確保してください。
遺言書本文のみならず、財産目録にも余白を確保することが求められるので、署名が右下の方によりすぎないように注意してください。


下記の画像を参考にしてみてください。


オレンジ色の部分が必要な余白です。


わかりやすい用紙を作ってみました。下記のPDFをダウンロードして印刷してみてください。
もし利用される方は、PCの環境によって余白幅が変わってしまう可能性もあるので、印刷した後に必ず余白は測ってください。


尚、既に書かれた自筆証書遺言を保管したい場合、A4サイズの用紙を使っていないこともあると思います。
既に書かれた自筆証書遺言の保管制度利用に関する経過措置として、7月10日から6カ月間(令和3年1月9日まで)の間はB5サイズ、A5サイズの用紙については書かれた保管申請が可能です。
期間の制限があるので、この点は注意が必要ですね。
1月9日って期限ですが、9日は土曜日なので法務局が閉まっています。
実質の期限は8日までということになります。

ちなみに、A3サイズなどA4サイズより大きい用紙で書かれたものは残念ながら保管できません。
これは必要な余白が確保できないからだそうです。
システム上の問題ですが、保管制度ではA4サイズでスキャンを行いデータを保管することとなります。
なので、小さいものは対応できても大きいものは対応できないということなんだそうです。
大きい用紙で遺言書を書いた方は残念ですが、書き直してください。

⑥ページ数を記載する
保管制度を利用する遺言書には必ずページ数を記載します。1枚目1/3、2枚目2/3、3枚目3/3などの書き方でOKです。


遺言書を書く上での注意点は以上です。
これらの点に気をつけて、まずは遺言書を準備しましょう。

【重要】
遺言書を作成するとき、一般的には封をするイメージがあると思いますが、保管制度を利用する場合は、封をしてはいけません。
遺言書をスキャンしてもらいますので、当然中身を提出することになります。
また、ホチキスやのりなどで2枚にわたった遺言書をくっつけるのもなしです。
くっついていたらスキャンできません。




そして書き終わったら、必ず遺言書のコピーを取りましょう。


2.予約する


遺言書は法務局で保管を依頼することになります。
どこでもいい、というわけではなく住所、本籍、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。
不動産や会社の登記の管轄とは別です。
まずは下記から、保管をする法務局を確認しましょう。

法務局のページを参照ください。http://www.moj.go.jp/content/001319026.pdf


どうしてもリンクを広くのがめんどくさい人向けに、東京だけピックアップしておきます。

遺言者の方の住所地、本籍地又は所有する不動産の所在地によってそれぞれ異なります。

①東京法務局本庁
→  千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、杉並区、足立区、葛飾区、江戸川区、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、小笠原村、八丈支庁の所管区域

②東京法務局板橋出張所
→ 中野区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区

③東京法務局八王子支局
→ 八王子市、立川市、昭島市、町田市、日野市、国分寺市、国立市、東大和市、武蔵村山市

④東京法務局府中支局
→ 武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、小金井市、小平市、東村山市、狛江市、清瀬市、東久留米市、多摩市、稲城市、西東京市

⑤東京法務局西多摩支局
→ 青梅市、福生市、羽村市、あきる野市、西多摩郡



法務局に行ってみるとわかるのですが、供託課が遺言書の保管を受け持つことになったようで、それ故に供託課がある法務局だけが受けているんですね。
下の写真を見るとわかると思いますが、供託課に後付けされた感が満載です。



さて、管轄の法務局がわかったら、電話かネットで予約しましょう。
法務省のQ&Aを見ていると予約は必須ではないのですが、予約しないとかなり待たされる可能性があります。
担当官の話では、大体1人の遺言書に対して1時間ぐらいで計算しているそうです。
予約が埋まっていたら、余裕で3時間ぐらいは待つ可能性もありそうです。


待つのが大好き、運を試したいって人以外は、予約をしましょう。


電話番号を調べるときはこちらから
http://www.moj.go.jp/content/001322714.pdf


ネットでの予約はこちらから
https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/


私自身はネットで予約したので、ネットの解説をしておきます。
上記のHPにアクセスしてみてください。

(1)法務局選択
まずは、法務局を選択する画面に移ります。
先ほど調べた管轄の法務局を選んでください。


(2)予約手続き その1
この画面中央の手続き名欄に、遺言書保管手続と入力して検索すると、各法務局ごとの予約項目が下に表示されます。
もっとも、画像のように多くの場合、最初から下に選ぶべき項目が表示されている可能性も高いので、そのまま選べばOKです。


(3)予約手続き その2
中ほど部分に、『予約申し込みに関する事項』に同意する欄があります。
ここにチェックを入れて(ちゃんと読みましょうね)、下部予約状況欄から〇のついてる空いている日の中から、希望日を選択します。
すると、続いて空き時間の選択画面が出るので、空いている時間の中から希望の時間を決めます。


(4)予約手続き その3
利用者ログイン画面が表示されますが、真ん中にあるように利用者登録しなくても進めます。
一度しかやらないなら利用者登録をしなくても良いと思います。
『利用者登録せずに申し込む方はこちら』を選んでいただき、利用規約に同意するとメールアドレスを記入する画面に移ります。
すぐにメールが届くので、そちらから再度HPに移りましょう。


(5)予約手続き その4
メールで届いたページにアクセスするとこんな画面が表示されます。
住所氏名など必要事項を記入して、確認へ進めば予約確定です。
場所、時間はちゃんと控えておきましょう。


こんなところで予約の手続きは完了です。

【重要】
法務局には絶対に本人がいかなくてはいけません。
どんなに体調が悪かろうが、歩けなかろうが、この制度を利用するときには自分自身が行く必要があるので、そもそも行けそうにない場合は制度利用自体を考え直すべきです。

尚、さいたま地方法務局では付き添い人の同伴は可能だけれど、実際の手続きの際は退室を求めているそうなので、認知症ぎりぎりの方の利用も実際には厳しそうです。これも当然と言えば当然なのですが。

残すところは 3.申請書・必要書類の準備 4.保管手続き の2つです。
もうすでにだいぶ長いので、今回はここまでとし、次回残りの項目を説明していきたいと思います。

近日中に公開します。
最後に重要なところだけピックアップしたものも作る予定です。

私からのお願いです。遺言書だけは必ずコピーを取ってくださいね。
次回、理由は明かします。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!!