2020/3/5仕事

Story of 自筆証書か公正証書か

遺言書を選ぶ

遺言書の種類


2009年頃に週刊朝日で『終活』という言葉が使われてから早10年を過ぎました。
この言葉もかなり市民権を得た感じがします。

今日は、先日経営者様の遺言書の相談を頂いたので、せっかくなので遺言書の種類の選び方についてというテーマで。


まず、大前提として、遺言書には三種類あります。
詳細はこちらを

遺言書とは


三種類ありますよーと言いつつも秘密証書遺言は選択肢に上がるケースはあまりないので、ここでは取り上げません。
厳密には、危急時遺言とか他にもありますが・・・ちょっと細かいので、やめときます。


実質的には、自筆証書遺言と公正証書遺言という選択の2択です。
よっぽど中身を知られたくない場合だけ秘密証書遺言を検討しましょう。


遺言書を選ぶ


種類があるのがわかっても、どれを選べばいいかよくわからないかもしれません。



ここからは、いくつかの選び方の判断基準をお伝えしていきます。


①法的に有効な遺言書を作りたい

→専門家がついていれば、どっちを選んでも有効には作れると思いますが、公正証書の方が、いったん法的な要件は満たした遺言書を作れます。自筆証書は書き方を間違えたり必要なことを漏らしてしまうと、無効になってしまうので注意が必要です。
尚、公正証書なら絶対安心!!と思っている方もいるかもしれませんが、作成した当時重度の認知症と判断された場合など、公正証書遺言でも無効になってしまうケースはたくさんあるので、公正証書なら絶対安心なんてことはありません。


②安く済ませたい


→自筆証書です。紙の種類に制限はないので、その気になればチラシの裏でも構いません(お勧めはしませんよ)。公正証書はどうしても公証役場の費用が掛かってしまいます。また、専門家の報酬も公正証書の方が高い事務所が多いです。
ちなみに、公正証書遺言の費用は、遺言書に記載される遺産の額によって値段が変わります。


③今すぐ作る


→これも自筆です。公正証書はどうしても事前の打ち合わせから公証人との日程調整まで時間がかかります。一応全国どこの公証役場で作ってもいいんですが、地方に行くとそもそも近場の公証役場は一つしかない、なんてこともざらです。
ちなみに沖縄県には2つしかなくて、特に那覇の公証役場はいつも混んでいるイメージです。


④書き直したい


→そもそも遺言書は書き直しOKです。何度書いても構いません。重複している内容は、最新のものが優先します。
財産構成が変わったり、気が変わって書き直したいなど遺言書は定期的に見直しが必要なものです。どの方法で作ったものでも、書き直しはどちらでも大丈夫です。
1回目公正証書→2回目自筆証書 〇
書き直しが前提であれば、毎度公証役場に行くのも大変ですし、財産が多い方は値段もバカにならないので自筆証書をお勧めします。


⑤亡くなったらすぐに手続きをしなくてはならない財産がある


→あまりないケースですが、会社経営者などの場合は、後継者に株をスムーズに引き渡すことも重要だったりします。このようなケースはすぐに遺言書を使える状態であることが求められます。
自筆証書では、死後、戸籍など必要書類を揃えて、家庭裁判所に検認申立を行う必要があります。遺言書開封の儀、みたいなことを裁判所で行います。裁判所の日程調整も含めると1~2カ月かかってしまう可能性もあり、急いでも待たざるるを得ません。公正証書の場合は、検認が不要です。なので、ここは公正証書に軍配が上がります。
尚、自筆証書は封がされている場合、勝手にあけてはいけませんよ。罰金を食らう可能性があります!


他にも選択基準はあると思います。
具体的にお話を聞いてからじゃないと判断できないことも多いです。
ちなみに、先日の経営者様のご相談では、ここ数年内に大幅に財産構成が変わる可能性があるとのことで、最初は公正証書をお勧めしていたものの、自筆証書遺言に切り替えて、財産構成が安定したら公正証書で書き直す方法でも良いかという結論に至りました。


今回の内容は、本年夏頃から施工される、自筆証書遺言の保管制度の利用は念頭にありません。
こちらの制度を利用する場合は、①~⑤の答えは若干変わってきます。
この制度については、もう少し内容が公開されたらまた別途お話ししようと思います。

最後に、うちの父や母は元気だから遺言書は早い、と思っているそこの方!
ホントに死にそうになってから書いて欲しいなんてよっぽど言えないものですよ。

終活こそ元気なうちに。



最後までお読みいただき、ありがとうございました!!