2020/4/6仕事

Story of 民法大改正

こんな時でも法律は変わるのです。

120年ぶりの大改正!!

世間様はコロナの話題で持ち切りで、今年はエイプリルフールすらも楽しむ感じではなかったですね。
こんなときからこそちょっとしたジョークや冗談で気が紛れればいいなぁと思ったものですが。

4月1日は、記念すべき120年ぶりの大騒ぎ(になるはずでした)です。
嬉しいかと聞かれると、嬉しいようなめんどくさいような(笑)
ご存じの方も多いかもしれませんが、民法特に債権法と呼ばれる契約に関する部分が改正されました。
相続に関する部分も結構改正されていますが、こちらは段階的にすでに改正が済んできているので、盛り上がりはいまいちですね。

改正法案が通ってから既に3年が経っています。
そもそも改正の話自体は、5年以上前からあったので個人的にはまだ改正してなかったのかぐらいなものです。
以前司法書士会の改正法の研究をする委員会に所属していたので、研究のため一応一通り目は通しました。

結局のところ、皆さんにとっては、自分の生活や仕事にどれほど影響があるの?っていうのが気になるところでしょうが、ここでは一から十まで全部をお伝えすることはありません。
っていうより解説できるほど精通してません・・・(笑)

気になる方は、もっと優秀な方のブログでものぞいてみてください。
『民法改正 影響』とかで検索したらたくさんヒットするはずです(笑)


改正気になるところ

とはいえ、一切触れないのも芸がないので、今回の改正について気になるところだけでもお話しておきたいと思います。

最初に言ったように、今回の改正は120年ぶりなんだそうな。
ちょっと意味が分からないぐらい昔のことです。

逆に、現在の世の中が120年前の法律で運用されているってことはある意味凄いことです。
法律が優秀だった・・・ということもできますが、実際のところ、私たちの規範とは法律を基に個別具体的に裁判所が判断したものが基準になっています。
これが判例というものです。

同じような事件が発生した時に、以前に似たような事例で裁判所が判断した内容をそのまま当てはめることを行います。
だから、法律に規定がなくても、過去の判例に当てはめて正しい正しくないの判断がされるわけです。
日本では、この判例の幅が非常に広く、法律に全く規定のないことも、判例があれば現場はその判例に従うことになります。

で、今回の法改正のほとんどは、そんな判例の内、もはや当たり前になりすぎているものを法律として明文化したものがほとんどです。
なので、現場の判断はあまり変わらないものが多いように思います。

と言いながらも、実はこの判例の明文化以外のもので結構大きな改正の入っているものがあります。
個人的にかなり気になっているのは、①時効制度と②保証制度の改正。
この二つは特に判例の明文化だけにとどまらないものがあり、ちょっと注意が必要じゃないかと思います。


①時効制度

旧民法
(消滅時効の進行等)
第166条
1.消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2.前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
(債権等の消滅時効)
第167条
1.債権は、
十年間行使しないときは、消滅する。
2.債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。


改正民法
(債権等の消滅時効)
第166条
1.債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを
知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から
十年間行使しないとき。
2.債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3.前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。



簡単に説明すると、旧法では、債権者が債権の存在を知ったかどうかは関係なく、請求をできるときから10年間で時効で消滅します。
改正法では、
 1.債権の請求をできるときから から5年間
 2.請求をできるときから10年間(旧法と同じ)
この2つのいずれか早い方が適用されて、時効で消滅することになります。

要は、旧法より時効にかかるのが早くなっているので、より注意が必要ということになります。
最も、事業債権に関しては、商法が適用されるので、5年の短期消滅時効が優先するので、事業者の方には影響は少ないかもしれません。

②保証制度

改正民法
第465条の6 (公正証書の作成と保証の効力)
第四百六十五条の六
事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された
公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
2 前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 保証人になろうとする者が、次のイ又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事項を公証人に口授すること。
 イ 保証契約(ロに掲げるものを除く。) 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
 ロ 根保証契約 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の範囲、根保証契約における極度額、元本確定期日の定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度において元本確定期日又は第四百六十五条の四第一項各号若しくは第二項各号に掲げる事由その他の元本を確定すべき事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
二 公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。
三 保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
四 公証人が、その証書は前三号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
3 前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。



こんなに長い条文を挙げても仕方がないんですが、注意しているのは事業用の借り入れについて、債務者(会社)が会社とは関係のない人物を保証人として立てる場合に保証契約を公正証書で作ることを義務付けることになりました。
公正証書で契約することを義務付けることで、公証人から保証人への説明がしっかりなされ、本当に保証すべきかしっかり考えましょうという保証人保護を理由としているそうです。

が、個人的には公正証書で契約書を作ったとしても公証人が満足いく説明をするとは思えず(ちゃんとやっている先生もいると思いますが・・・)どうせ、その費用分を事業者側が負担することになるので、メリットは薄いように思います。
改正法では、他に保証人に対して、事業者が情報開示の義務を負うことになったのでその確認ぐらいなものでしょうか。

もっとも、一番注意が必要だと思っていた強制執行認諾文言を公正証書内に付すことができるかどうかは調べると解決済みで、法務省から、この公正証書に強制執行認諾文言は付けることができないと明言されていました。
これ結構重要なことで、もし会社が借金を支払えなかった場合、保証人に請求がいきますが、差し押さえまではいきなりできるわけではありません。

差し押さえをするためには、裁判を起こして勝って、次に差し押さえ、というプロセスが必要です。
ところが、公正証書で『もし払えなかった場合は直ちに差し押さえされても仕方ない』という内容の文言が入っていると、裁判手続きをすっ飛ばしていきなり差し押さえができるようになります。
実務的にはかなり便利なのですが、これは悪用されるとすぐに差し押さえができてしまうので、かなり厄介な代物です。
このことについては、しっかり解決が提示されていたので、その点は非常に安心しました。

主契約と保証意思宣明公正証書を同時に作った場合(もし作れればですが)、強制執行認諾文言を付けることもできそうな感じはしたので、悪用されなければいいなと切に思います。


保証の分野はこれ以外にもかなり改正が入っています。
金融機関や事業取引で保証人を取る可能性の高い仕事をされている方は注意してください。


最後に

ということで、以上で、個人的債権法改正の気になったところをピックアップしました。
実務的に影響のある分野の仕事をしている人は、これから一緒に勉強頑張りましょう(笑)


最後までお読みいただき、ありがとうございました!!